警備業

警備業の反社会的勢力・不当要求対応|暴排条例と全国警備業協会の宣言を弁護士が解説

警備業の反社会的勢力・不当要求対応|暴排条例と全国警備業協会の宣言を弁護士が解説
目次

0. はじめに

警備業は、①現場で不特定多数と接触する、②公安委員会の認定を受けた許認可事業である、③人手不足で下請・応援関係が複雑化しやすい、という3つの特徴から、反社会的勢力や匿名流動型犯罪グループ(トクリュウ)の接近を受けやすい業態です。

東京都暴力団排除条例は、警備会社が暴力団事務所と知りながら警備サービスを提供する行為そのものを禁止行為の例として明示しています(出典:警視庁「東京都暴力団排除条例Q&A」)。

全国警備業協会も業界として反社会的勢力排除宣言を発しています(出典:一般社団法人全国警備業協会「暴力団等反社会的勢力排除宣言」)。

1. なぜ警備業は反社会的勢力と接触しやすいのか

暴力団対策法は平成3年に制定され、暴力団を反社会的な団体として法的に位置づけ、不当な要求行為等を禁止しています(出典:一般財団法人地方自治研究機構「暴力団排除条例」解説)。

もっとも、暴力団対策法の制定後も暴力団は様々な経済取引に介入して資金を獲得しており、警察の取締りに加えて社会全体で暴力団を排除する取り組みが必要とされてきました。

この流れの中で、平成19年には犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が取りまとめられ、その後、各都道府県で暴力団排除条例が制定されています。

2. 東京都暴力団排除条例が名指しする「警備業」のリスク

前述のとおり、警視庁が公表する東京都暴力団排除条例のQ&Aでは、利益供与にあたる禁止行為の具体例として、「警備会社が、暴力団事務所であることを知った上で、その事務所の警備サービスを提供する行為」が明示的に挙げられています。これは警備業界にとって、他業種の一般論ではなく、業界名指しでリスクが示されている事例です。

暴力団排除条例に基づく規制の新しさは、従来の暴力団対策法が暴力団の支配下にある事業者や暴力団と密接な関係にある事業者を主な対象としてきたのに対し、暴力団の側にない一般の事業者についても、規制の対象としうるという枠組みを設けた点にあります。

3. 業界団体の取り組み:全国警備業協会の反社会的勢力排除宣言

一般社団法人全国警備業協会は「暴力団等反社会的勢力排除宣言」を公表しています。この宣言では、警備業が人の生命・身体・財産を守る安全産業としての自覚と誇りを持ち、適正な業務の提供に努めるとともに、外部専門機関と連携して組織的な排除に取り組む姿勢が示されています。

4. 不当要求防止責任者制度の活用

暴力団対策法は、事業者に対して「不当要求防止責任者」を選任することを努力義務として定めています。警視庁によれば、責任者が担うべき業務には次のようなものが含まれます(出典:警視庁「不当要求防止責任者選任及び講習」)。

  1. 事業所における対応態勢の整備
  2. 従業員に対する指導教養の実施
  3. 不当要求による被害発生時の被害状況の調査・警察への連絡
  4. 暴力団排除組織との連絡
  5. その他、不当要求による被害を防止するための業務

警察は、選任された責任者に対する指導・助言等の援助として「不当要求防止責任者講習制度」を運用しています。

5. 想定される接触場面

警備業において反社等の接触が想定される場面は以下のとおりです。

  • 現場で警備員の対応に因縁をつけ、示談金・見舞金を要求される
  • 一般企業を装った取引先として警備契約の受注を持ちかけられる
  • 応援・下請として入ってきた事業者の背後に反社会的勢力が存在する
  • 機関誌の購読、賛助金、物品購入といった「接近型」の要求

暴力団排除条例上の禁止行為には、故意に利益供与を行う場合だけでなく、状況によっては過失で提供した利益についても問題となりうる例が示されています。もっとも、法令上の義務に基づく契約の履行や、正当な理由がある場合は禁止の対象外とされるなど、一律に判断されるものではありません。

6. 対応を誤った場合の帰結

暴力団排除条例に基づき、都道府県公安委員会は違反事業者に対して勧告・公表を行うことができ、悪質な場合は罰則の対象となる規定を置く条例もあります。

最大の問題は、一度要求に応じてしまうとそれが弱みとなり、要求が反復・拡大するという点です。

「プレッシャーが辛すぎるから早く要求に応じて解決してしまおう」と考えないように注意しましょう。

要求に応じても新しい要求が来るだけです。むしろ、プレッシャーをかければ応じる事業者として認識され、要求がよりエスカレートします。

7. 平時にやっておくべきこと(入口対策)

反社対応の平時の対策としては以下の施策が考えられます。

  • 暴力団排除条項の整備
    警備委託契約・下請契約・雇用契約すべてに、反社会的勢力でないことの表明・確約と、該当が判明した場合の無催告解除条項を入れる
  • 反社チェック体制の構築
    取引開始前のスクリーニング手順、調査記録の残し方、判断基準の社内ルール化
  • 不当要求防止責任者の選任・講習受講
  • 対応マニュアルの整備
    応対人数、時間、場所、録音の可否、その場で回答しないという原則の明文化

8. 有事の対応(出口対策)

反社からの接触は事前に準備しても完全に防止できるものではありません。そのため、反社対応が発生した有事の際には以下の施策を講じましょう。

  • 対応窓口を一本化し、現場警備員・現場責任者に個別対応させない
  • 面談内容の録音・記録を徹底し、要求内容と対応経過を時系列で保全する
  • 弁護士名での警告書・通知書の送付により、法的対応を辞さない姿勢を明示する
  • 警察・暴力追放運動推進センターとの連携
  • 必要に応じ、面談強要禁止・業務妨害禁止の仮処分、損害賠償請求、刑事告訴を検討する

警察庁の資料によれば、暴力追放運動推進センターと弁護士会が緊密に連携し、暴力団犯罪に関する損害賠償請求訴訟を支援する取り組みも行われています。

地域の暴追センターが暴力団事務所の使用差止請求訴訟を提起し和解に至った例も報告されています(出典:平成27年警察白書)。

9. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 「知らなかった」場合でも暴力団排除条例違反になりますか?

A. 相手が暴力団員等であることを知らなかった場合や、提供した利益が暴力団の活動を助長することにならないと考えられる場合など、条例上の禁止行為に該当しないとされる例もあります[4]。もっとも、通常の取引の中で確認すべき事項を怠っていた場合には過失が問題になり得ます。

Q2. 不当要求防止責任者は必ず選任しなければなりませんか?

A. 暴力団対策法上、選任は努力義務とされています。現場での接触機会が多い警備業では、選任のメリットが大きいといえます。

Q3. 現場で不当要求を受けた場合、警備員にその場で判断させてよいですか?

A. 推奨されません。対応窓口を本部に一元化することが望まれます。

10. 警備業者向けの初回無料面談のご案内

TECH GOAT PARTNERS法律事務所(第二東京弁護士会)の弁護士新井優樹(民事介入暴力対策委員会所属)は、反社会的勢力・カスタマーハラスメント等の不当要求対応を行い、これらのセミナー講師も担当しています。また、反社を相手方とする訴訟の代理人の経験もあります。

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