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警備業法違反の行政処分事例まとめ|教育義務・名義貸し・違法派遣を弁護士が解説

警備業法違反の行政処分事例まとめ|教育義務・名義貸し・違法派遣を弁護士が解説
目次

0.はじめに

警備業法違反による行政処分(指示・営業停止・認定取消し)は、都道府県ごとに実名で公表されています。2026年に入ってからも東京都公安委員会による認定取消し事例が発生しています(出典:警視庁 警備業法に基づく行政処分の公表)。本記事では、警察庁・警視庁が公表する統計と実際の処分事例、2025年以降の法改正、そして2026年2月に最高裁で判断が示された欠格事由をめぐる判決まで、最新の情報に基づいて解説します。


1. 警備業法違反は「実名で公表される」リスクである

警備業法違反があった場合、都道府県公安委員会は指示・営業停止命令・認定取消し・営業廃止命令という行政処分を行い、多くの都道府県警察がウェブサイト上で処分を受けた警備業者名を実名で公表しています。

警視庁のホームページでは、行政処分を受けた警備業者について、認定番号・処分内容・処分年月日が公表期間3年間にわたり掲載される運用となっています。実際に、東京都公安委員会の認定を受けていた警備業者が2026年6月に認定取消しの処分を受けた事例が公表されており、これは大阪府警(大阪府警察本部「警備業者に対する行政処分状況のお知らせ」)・愛知県警など他の道府県警察でも同様の運用がなされています。

つまり警備業法違反は、罰金や営業停止という直接的な不利益にとどまらず、取引先や求職者がインターネットで容易に確認できる形で公表されるという信用面のリスクを伴います。

取引先からは行政処分を受けたことにより契約の解除・解約の主張をされた場合に収益に直接的に大ダメージを負います。また、人手不足の状況に置いて採用の難易度が高くなることは採用コストの高騰や人員不足による失注リスクにも繋がります。

2. 警察庁が公表する行政処分の実施状況

警察庁の統計によれば、警備業者に対する行政処分は指示処分が最も件数が多く、営業停止処分・認定取消し処分はそれに次ぐ位置づけです。処分件数は年によって変動しますが、警備業者数が全国で1万社を超える規模で推移する中、行政処分は決して稀な出来事ではないという点を押さえておく必要があります。

※出典:警察庁生活安全局生活安全企画課 令和7年における警備業の概況


3. 実際に多い違反類型と処分内容

3-1. 警備員教育の未実施(警備業法21条)

警備業者には、警備員に対する新任教育・現任教育を法定の時間数で実施する義務があります。教育を実施しないまま警備員を現場に配置した場合、指示処分から営業停止処分まで、教育実施率の低さに応じて処分が重くなる運用がなされています。

3-2. 教育実施簿の虚偽記載

実際には教育を行っていないにもかかわらず、教育実施簿に「実施済み」と記載する行為は、複数の事業者において確認されている違反類型です。この場合、30万円以下の罰金に加えて認定証の返納命令が下されることがあり、認定証を返納すると一定期間(欠格事由に該当する期間)新たな認定を受けられなくなります。単なる行政処分にとどまらず、刑事罰と事業継続の両面に影響する最も重い類型です。

3-3. 欠格事由該当者の配置

欠格事由に該当する者(暴力団員等)を警備業務に従事させていた場合、一定の期間営業停止命令が下される可能性があります。警察庁は、「警備業法に基づく指示及び業務停止命令の基準」と題する文章を公表しており、各種処分を行う具体的な処分基準を定めています。採用時のチェック体制が形骸化しているとこうした処分に直結します。

3-4. 違法派遣(労働者派遣法・警備業法の同時違反)

警備業務は労働者派遣法上、原則として労働者派遣が禁止されている業務です。2026年2月には、交通誘導警備員が委託元とは別の会社の指揮命令下で業務に従事していた疑いで、千葉県警により書類送致された事案が報じられました。契約書の形式が業務委託や応援体制になっていても、現場で実際に指揮命令を行っていたのが誰かという実態で違法派遣か否かが判断される点が、この事案からも分かります。人手不足による応援要請が常態化している業界だからこそ、注意が必要な違反類型です。

3-5. 名義貸し(警備業法13条)

自己の認定名義で、認定を持たない他社に警備業を営ませる行為は明確に禁止されています。再委託の手続を踏まずに他社警備員を応援として使う運用が名義貸しと評価されるリスクをはらんでいる点は、業界団体等からも繰り返し注意喚起されています。

4. 2025年〜2026年の法改正・制度変更

4-1. 2024年の改正

警備業者が作成した標識を営業所やウェブサイトに掲示することが義務化され、発注者・利用者が認定状況を確認しやすくなりました。

4-2. 2025年6月の刑法改正

懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化されたことに伴い、警備業法の罰則規定にもこの変更が反映されています。

5. 【2026年2月・最高裁判決】警備業法の欠格事由をめぐる判断

2026年2月18日、警備業法上の欠格事由に関する重要な判断が最高裁判所(令和5年(オ)第360号、同年(受)第445号 地位確認等請求事件)で示されました。事案は、交通誘導警備業務に従事していた警備員について保佐開始の審判が確定したことに伴い、警備業法上の欠格事由(旧規定における被保佐人該当性)を理由に雇用契約が終了したことの当否が争われたものです。警備業法2条1項は警備業務の定義を、同法は警備員の欠格事由を定めており、この欠格事由規定の適用のあり方そのものが最高裁で審理される事態となりました。

この判決が示す実務上の教訓は、欠格事由の該当性を機械的に適用して雇用契約の終了・配置転換を行うことにはリスクが伴うという点です。欠格事由に関する社内規程や雇用契約の条項を、最新の法改正・判例を踏まえて見直しているかどうかが、今後問われることになります。

6. 行政処分・立入検査を受けたときに何をすべきか

行政処分は聴聞等の手続を経て行われます。この段階で重要になるのは次の3点です。

  1. 事実関係の正確な整理
    教育実施簿・契約書・シフト記録など、立入検査で確認される書類を横断的に確認する
  2. 意見書の提出
    処分の重さは違反の悪質性だけでなく、事業者側がどれだけ主体的に是正措置を講じたかによっても左右される
  3. 再発防止策の具体化と報告
    教育体制・応援契約の見直しなど、実効性のある再発防止策を示す

検査を受けた直後の初動対応が、その後の処分内容を左右します。


7. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 警備業法違反の行政処分は本当に実名で公表されるのですか?

A. はい。警視庁をはじめ多くの都道府県警察が、認定の取消し・営業停止命令等を受けた警備業者の名称・認定番号・処分内容をウェブサイト上で一定期間公表しています。

Q2. 教育実施率が低いと、どの程度の処分になりますか?

A. 実施率に応じて指示処分から営業停止処分まで段階的に重くなる運用がなされているとされ、教育実施簿の虚偽記載が確認された場合は罰金刑と認定証の返納命令という、より重い結果に至ることがあります。

Q3. 人手不足で他社に応援を頼む場合、何に注意すればよいですか?

A. 実際に現場で指揮命令を行っているのが自社か応援元の会社かによって、労働者派遣法上の適法性が判断されます。契約書の形式だけでなく、現場での指揮命令の実態を確認し、必要であれば三者間契約の形に整理することが推奨されます。

Q4. 2026年2月18日の最高裁判決はどのような実務対応を求めていますか?

A. 欠格事由に該当したことを理由に画一的に雇用契約を終了させる運用について、慎重な検討を求める内容です。就業規則・雇用契約上の欠格事由条項が現在の法解釈に適合しているか、確認することが望まれます。

8. 弁護士への相談

TECH GOAT PARTNERS法律事務所(第二東京弁護士会)の弁護士新井優樹(民事介入暴力対策委員会所属)は、反社対応やカスハラ対応といった不当要求対応や関連するセミナーを行っています。警備業に密接に関連する業務を取り扱っていますので、個別のトラブルのご相談や顧問契約のご相談はお気軽にご連絡下さい。初回面談は、弁護士との相性確認などを行う時間として無料としておりますので、こちらからお気軽にお申し込みください。