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【弁護士執筆】取締役の辞任の方法・損害賠償リスクについて解説

【弁護士執筆】取締役の辞任の方法・損害賠償リスクについて解説
目次

1 取締役の辞任の方法

(1)辞任が出来る時期

取締役は、いつでも辞任することができます。

会社と取締役は委任関係にあるところ、委任契約はいつでも解除することができるためです(民法651条1項)。なお、辞任にあたり、株主総会の決議を取得する必要や他の取締役の同意を取得する必要はありません。

(2)辞任の意思表示の方法

辞任の意思表示の方法に制限はありません。

したがって、口頭・書面(辞任届)の提出・電子メールやチャットの送信等のいずれの手段でも、辞任の意思表示がなされていれば、辞任の効力が生じます。

もっとも、取締役や代表取締役の辞任は登記事項であるところ、登記申請書類として辞任届を用意する必要があります。なお、代表取締役の辞任の場合、辞任届の押印は代表取締役の実印ではなく会社実印で行うことも可能です。会社実印を使用した場合、印鑑登録証明書の添付が不要となり、登記申請書類を少なくすることができるため、実務上はおススメの手段となります。代表取締役個人の実印を押印した場合には、印鑑登録証明書が必要になるため取得を失念しないよう注意しましょう。

2 取締役の辞任に伴う損害賠償義務の可能性

(1)辞任に伴う損害賠償請求

前述のとおり、会社と取締役の契約関係は委任契約であるため、取締役はいつでも辞任することができます。

もっとも、委任契約は相手方にとって「不利な時期」に解除した場合には、損害賠償義務を負うものとされています(民法651条2項)。もっとも、「やむを得ない事由」があるときには損害賠償義務を負いません(民法651条2項)。

(2)「不利な時期」の判断基準

どのような場合に「不利な時期」に該当するのか一義的な基準は存在しません。最終的にはケースバイケースですが、以下の様な場合には会社の業務が混乱することが想定され、「不利な時期」に該当する可能性が高いため、辞任する際には注意が必要です。

  • 業務の引継ぎ等を一切行わなかった場合
  • 事前の協議をせずに突如として辞任した場合

(3)「やむを得ない事由」の判断基準

こちも同様に、どのような場合に「やむを得ない事由」に該当するのか一義的な基準は存在しません。最終的にはケースバイケースですが、以下の様な場合には「やむを得ない事由」が認められる可能性があります。

  • 取締役の生命・身体または精神に重大な問題が発生した場合
  • (上記に関連するものとして)社内で暴行等を受け通常の業務遂行が不可能な状況に追い込まれていた場合

3 辞任する際の望ましい対応

 前述のとおり、「不利な時期」、「やむを得ない事由」のいずれも解釈に幅のある概念であるため、一方的に突如辞任することは一定程度のリスクを伴います。

 そのため、辞任の理由に関わらず、他の取締役や経営幹部に事前に辞任を検討していることを伝え、後任の取締役の要否や人選に関する提案、業務の引継ぎに関する協議、辞任の時期の調整、社内や取引先への説明の内容及び時期等について十分に協議してから正式に辞任届を会社に提出することが望ましいです。


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